多重債務(借金)問題のご相談

借金にお困りの方へ

長引く不景気を受け、クレジットカード、サラ金などから、多額の請求を受け、支払いに困っている方も多くおられます。

こうした借金の整理には、いろいろな方法がありますが、おおざっぱに分ければ、裁判所の手を借りる「破産」「民事再生」「特定調停」と、裁判所の手を借りない「任意整理」とがあります。

裁判所の手を借りて、借金を全く返さないですむようにすることをめざす方法に「自己破産」、裁判所の手を借りて借金を長期にわたって分割して支払うことをめざす方法に「民事再生(小規模個人再生)」、「特定調停」、裁判所とは関係なしに債権者と話し合いをして返していくことをめざす方法に「任意整理」などがあります。

多重債務(借金)問題のご相談
裁判所の手を借りない借金の整理についてご説明します。任意整理
裁判所に間に入ってもらう借金の整理についてご説明します。特定調停
裁判所の手を借りる借金の整理についてご説明します。民事再生(小規模個人再生)について
破産申立についてご説明します。破産

「任意整理」

「任意整理」は、通常弁護士などが借り主の代理人として、金融機関やサラ金、カード会社などと交渉します。

かなり以前から借金をしている方の場合、利息制限法をオーバーしている利率で借入をしていることが多くあります。
現在では、そうした利率で貸付をすると処罰されるようになったのですが、少し前までは利息制限法をオーバーした利率での貸付は処罰されなかったので、大手のサラ金やカード会社での利息制限法オーバーでの貸付がなされていました。

弁護士は、借主の代理人として、いつ、いくら借りて、いつ、いくら返したのか、を記録した取引履歴を貸金業者から受取って、利息制限法の利率で計算したらどの程度の借金が残るのか、計算します。

もし、利息制限法の利率で計算した場合、借金の残高がマイナスになる場合は、いわゆる「過払金」として、貸金業者に返金を求めます。

また、利息制限法の利率で計算しても借金が残る場合は、できるだけ利息制限法の利率で計算した元本を長期(おおむね3年程度)の分割で返済し、将来の利息などは支払わないことで貸金業者を説得します。
ただ、近年貸金業者の経営は非常に苦しく、以前よりはるかに説得が難しくなっています。

「特定調停」

「任意整理」は、弁護士に頼まず借主自身が貸金業者と交渉することもできますが、現実には、力の差もあってむずかしいのが実情です。

そこで、借主の方が裁判所に間に入ってもらって、貸金業者との間の話をまとめてもらうのが「特定調停」です。

具体的な申立の方法は、住所地の近くの簡易裁判所で教えてもらえるはずです。

裁判所は、貸金業者の説得に努めますが、話し合いに応じるよう強制することはできないので、限界があります。
とくに、利息制限法で計算した元本よりも支払い総額を減らすことは、非常に難しいです。

「民事再生(小規模個人再生)」

「任意整理」や「特定調停」は、一つ一つの貸金業者と交渉し、それぞれの了解を得ていく手続であり、了解の得られない貸金業者との間では解決が難しいものです。 これに対し、「民事再生」は、裁判所の手を借りて、一部の貸金業者の同意が得られなくとも、強制的に借金の一部カットや長期分割ができるようにしていく制度です。

ときどき、有名な会社が民事再生申立をしたことについて新聞報道されますが、サラリーマンや零細自営業者の方には、大きな会社とは違う特別の制度があり、これを「小規模個人再生」「給与所得者等再生」といいます。

「小規模個人再生」を申し立てると、たとえば、いまお持ちの財産が20万円程度しかなく、利息制限法で計算した借金の額が住宅ローンを除いて300万円であったとすれば、100万円を3年から5年で返済し、のこりを免除してもらう、ということになるのです。

100万円を5年、つまり60か月で割れば、1か月当たり2万円を下回り、かなり楽になる可能性があります。

また、一定の条件のもとに、住宅ローンについては、そのまま従来通り支払うことが認められる場合もあります。

ただ、借金の返済をめざす以上、一定の安定した収入が見込めなければ、利用することができません。

しかし、「小規模個人再生」の場合、債権者(議決権者)の総数の半数以上が再生計画案に不同意であったり、あるいは、同意しない議決権者がごく一部であったとしても、その議決権者の債権が全債権の2分の1を超えたりするような場合には、再生計画が認可されませんので、利用することができません。

これに対し、「給与所得者等再生」の場合であれば、弁済しなければならない額が、収入から所得税や生活維持に必要な費用(政令で決まっています)を控除した額の2年分である、といった条件があり、収入額によっては「小規模個人再生」より多い額を弁済しなくてはなりませんが、所定の条件を満たしているならば、たとえ債権者全員が反対しても、認可されることになります。

ただ、「給与所得者等再生」は、給与収入のある方(いわゆるサラリーマン)しか利用できないという制限があります。
つまり、無収入の方や、自営収入のみが収入であるなど、給与収入のない方は利用できないのです。

また、「給与所得者等再生」は、以前に給与所得者等再生や破産による免責を利用したことがある方は、再生計画認可決定あるいは免責決定の確定から7年間は、利用できません。

「小規模個人再生」「給与所得者等再生」のいずれを利用するのがよいかは、債権者の態度、収入などの事情をもとに判断することになります。

「破産」

生活保護を受けているとか、失業状態など、もはや借金返済のめどがたたない方については、最後の手段として破産申立があります。

この場合、いつ、どこから、いくら借りたのか、今、どのような財産を持っているのか、毎月どのようにお金を使っているのか、無駄遣いをしたことはあるか、あるなら、どのような無駄遣いをしたのか、などを書類にまとめて裁判所に提出します。

借主に財産がほとんどなければ、原則として裁判所は、破産手続開始と同時に破産廃止を決定し、そのうえで、貸金業者の意見を聞いて、免責を許可するかどうかを判断します。
免責が許可されると、借金を返済しなくてよくなるので、それによって損をする貸金業者の意見を聞くわけです。

借主が、競馬などギャンブルで多額の無駄遣いをしたことなど、法律で決まっている事情(免責不許可事由)があれば、免責が許可されないことがあります。
逆に、免責不許可事由がなければ、たとえ貸金業者が全員反対しても、裁判所は免責を許可してくれます。

なお、借主にある程度以上の財産があると、裁判所は破産手続開始と同時に、借主の財産を管理する破産管財人を決めます。
破産管財人は、借主の財産の一部を取り上げ、貸金業者などに分配します。
それでも残る借金について、裁判所が免責を許可するかどうか判断することになります。

このように、貸金業者が反対しても借金を返さなくてもよくなる点で、「破産」は非常にありがたい手続です。

しかし、本当は財産があるのに、それを隠すなど、裁判所にうその報告をすると、処罰されることもありますし、免責許可が得られるまで、生命保険外交員や警備員など、一定の職業に就けません。

したがって、破産申立をするに先だって、あらかじめ弁護士などに相談することをお勧めします。