債権管理のご相談

「債権管理」・・・・って?

個人や会社で、商売をしておられる方の場合、品物を現金で売り上げる小売店などでなければ、納品をすませてから支払いまでに少し日数がかかることも多いはずです。
この場合、予定通り支払いがされれば問題ありません。
しかし、なかには支払いが遅れる取引先もあるでしょう。

支払いの遅れが頻繁になると、ご自身の資金ぐりができなくなり、ご自身の信用を落とすことにもなりかねません。
また、ほかの仕事の忙しさから請求しないで放置しておくと、時効になって請求できなくなることもあります。
それを防ぐために、ときには裁判手続きを利用したほうがよい場合もあります。

「債権」は、お金などを支払ってもらう権利のこと、「債権管理」というのは、お金を払ってもらう約束が守られるように、やるべき必要な作業、ということになります。

債権管理のご相談
どうすれば「約束」が守られるのかご説明します。「約束」が守られるためには、どうすればいいの?
「判決」についてご説明します。「契約書」を交わしたのに、「約束」が守られない!
「強制執行」についてご説明します。「判決」をもらえば、自動的に払ってもらえる?
「財産開示」についてご説明します。相手方の財産がどこにあるのか、わからない場合は?
時効についてご説明します。訴状を提出しないで、放置しておくと・・・?
裁判所での手続きについてご説明します。裁判所での手続きは、自分でするの?
債権管理について、よくあるご質問にお答えします。よくあるご質問

「約束」が守られるためには、どうすればいいの?

「約束」が守られるためには、お金を支払うがわと、支払ってもらうがわとの間で、どのような「約束」をしたのかが、はっきりしていなくてはなりません。

どのような「約束」をしたのか、があいまいであれば、トラブルになるのも当然でしょう。

品物を売る場合であれば、どのような品物を、いつ、どれだけ、いくらで売るのか、代金は、いつまでに、いくら支払うのか、がはっきりしている必要があります。

工事などの仕事をする場合でも、どのような仕事を、いつまでにするのか、ということがはっきりしていなくてはなりません。

どのような「約束」をしたのをはっきりさせておくためには、その内容を「契約書」という形でまとめておくのが理想です。
「契約書」を作るには、できるだけ約束の中身を明確に書く必要があります。
どのような表現をするのが良いのか、不安な方は、「契約書」の取り交わしの前に、弁護士と相談することをお勧めします。

「契約書」を交わしたのに、「約束」が守られない!

でも、実際には「契約書」を交わして仕事をきちんとしても、お金が支払われないこともあります。

その原因はさまざまですが、大きくわけると、仕事に不備があるなど、お金を請求するがわの落ち度があるかどうかが問題となる場合と、請求するがわの落ち度はないが、お金を支払うがわの資金繰りがつかない場合とがあります。

どちらの場合も、相手方にまず支払いを請求し、相手方の言い分を聞いてみることになるでしょう。
しかし、その言い分がとても受け入れられるものでない場合、あるいは相手方が夜逃げしていて話し合いのしようがない場合は、話し合いでの回収はできないことになります。
そうすると、「約束」を守らせるには、裁判所に訴えを起こすなどして、支払いをするよう命じてもらう必要があります。
訴えを起こすは、こちらの言い分を書いた「訴状」という書類や「契約書」などの証拠書類を裁判所に提出することになります。
「訴状」が提出されると、裁判所は、相手方を呼び出し、その言い分を聞いたり、関係者への質問(尋問)をして、「支払え」あるいは「支払いの必要はない」という判断をします。

これを「判決」といいます。

前にお話しした「契約書」は、裁判で証拠書類になりますので、きちんと書いておかないと、裁判で不利になることもあるのです。
こうした理由からも、「契約書」は大切なのです。

「判決」をもらえば、自動的に払ってもらえる?

「判決」に不満がある場合、「判決」を受け取ってから14日以内に控訴ができます。
双方が「判決」に控訴しなかった場合、判決は確定します。
これを受けて、支払いを命じられた側が支払いをするケースもあります。
しかし、支払いを命じる判決が確定しても無視される場合もあります。
この場合、裁判所が自動的に相手方の財産を取り上げて支払ってくれるわけではありません。
自分で、相手方の財産を探して、それを強制的にお金に換えるなどして支払ってもらう手続きをしなくてはなりません。

これを「強制執行」といいます。

「強制執行」には、相手の不動産を強制的に売却して代金を支払いにあてる「不動産競売」、相手が勤め先や取引先から受け取る給料や代金を、こちらに支払ってもらう「債権差押」などがあります。

相手方の財産がどこにあるのか、わからない場合は?

支払いを命じる「判決」が確定したのに、強制執行できる財産がどこにあるのか、分からない場合は、一定の条件のもとで、裁判所に「財産開示」の申立ができます。

これは、支払いを命じられたにもかかわらず支払いをしない人や会社に対し、その人や会社の持っている銀行預金、不動産、勤め先その他財産の状況について、具体的に文書で報告することを命じるものです。

この報告がなされれば、その財産に対し強制執行の申立をすることになります。

訴状を提出しないで、放置しておくと・・・?

ここまでのお話で、「非常にやっかいだなあ、しばらくほっておこう」と思われた方も多いでしょう。

でも、訴状を提出しないで放置しておくと、たとえば、売買代金の債権は、2年で時効にかかっていまいます(先方が「支払わないといけないのは分かっています」と認めた場合などは別です)。

運送業者の運送賃とか、飲食店の飲食料金などは、1年で時効にかかってしまいます。

この期間をすぎて、裁判を起こした場合、相手が「時効である」と主張すると、請求が認められないことになります。

この「時効である」という主張のことを、「援用」といいます。

裁判所での手続きは、自分でするの?

裁判所の窓口や、裁判所のホームページで訴状その他の申立をする場合の書類の書き方を簡単に説明しています。
その説明をもとに、ご自身で裁判を起こすこともできます。

ただ、会社の場合は、原則として代表取締役などの代表者が手続きをすることになりますが、簡易裁判所などでは、従業員が代理して手続きをすることが認められる場合もあります。

その場合、裁判所は、手続の進め方は説明してくれます。
しかし、裁判所に来られた方に一方的に有利な助言をすることや、裁判をした場合、いわゆる「勝てる」「負ける」などといった見通しを教えることは、原則的にはしてくれません。

不安がある場合は、コストがかかりますが、弁護士にご相談ください。

よくあるご質問

1:契約を交わすとき作る「公正証書」というのは、どのようなものですか?

例えば、債権者と債務者の両方が公証人役場に出向いて、どれだけのお金を、どのように返すのか、を公証人がまとめた文書のことです。

多くの場合、公正証書には、債務者が支払いを怠った場合、強制執行に服するという記載がなされます。 そのような記載があれば、債権者は、判決を得ることなく、強制執行をすることができます。のことです。

ただし、公正証書を使って、「財産開示」の申し立てをすることはできません。

2:不動産に抵当権を設定することがありますが、これはどのようなことですか?

借りた人などの不動産に予め抵当権の設定登記をしてもらうと、借金が返されないときに、債権者が裁判所にその不動産の競売を申し立てて、その売却代金から優先的に返済を受けられる制度です。
この場合、予め判決を得ておく必要はありません。
住宅ローンでは購入した住宅に抵当権が設定されるのが通常です。

3:借金の担保として、不動産に抵当権を設定してもらう場合、注意する点はどのようなことですか?

まず、登記簿を確認し、先順位の抵当権などが設定されているかどうかを確認する必要があります。
先に抵当権が設定されていると、競売の場合、最初に抵当権の設定と受けた債権者が優先して売却代金から返済を受けることになるため、後に抵当権設定を受けた債権者に支払いがなされないこともあるからです。    

当然ながら、不動産の価値を調べる必要もあります。
不動産は値下がりすることも多いですし、競売となると不動産業者の仲介などで普通に売買される場合よりも代金が低くなることが通常です。
また、借金をする人と、不動産の持主がちがう場合は、持ち主に会うなどして、その人の担保権を設定する意思を確認する必要があります。

以上は代表的な注意事項で、ほかにも、注意すべき点はいくつかあります。

4:「仮差押」とは、どういうものですか?

公正証書がない場合、お金を支払ってもらうためには、訴えを起こし、判決を得てからでないと強制執行ができないことになります。

しかし、判決が出るのを待っていては、債務者が今持っている財産を手放して、債務者の財産を差し押さえることができないこともあります。
その場合、債務者に対する債権があることと、今財産を仮に差し押さえる必要があることについて、裁判官を納得させる資料を提出し、債務者の財産を仮に差し押さえるよう申し立てるよう申し立てることができる制度があります。

この場合、裁判所から相当金額の担保を法務局に供託することを求められます。

ただ、債務者の財産を仮に差し押さえても、すぐにそこから回収できるわけではありません。
仮差押がなされても、債務者が自発的に支払いをしないときは、改めて判決を得て強制執行手続を申し立てる必要があります。